押井守著『仕事で必要なことはすべて映画で学べる』を読んで勝敗論を学ぶ

今まで生きてきて映画はあまり観てこなかった。そんな僕でも全ての作品を観ている映画監督がいる。押井守である。イノセンスのDVDに収録されている鈴木敏夫との対談で、人間は言語でできているって言い切っているのを観てから好きになった。

映画監督の押井守が、会社に使い倒されない心得を、映画を紹介しながら伝授する。映画のあらすじと、独自の解釈を交えて仕事論の解説という構造になっている。9つ映画が紹介され仕事論を展開しているが、共通しているのは徹底した勝敗論。世間一般的な勝利(映画で例えたら興行収入や観客動員数)ではなく、自分が独自に設定した勝利を得よ、という自己実現を最大の勝利条件としている。

あるいは戦争というタイトな状況でどうやって生き残るか。デタラメな命令の中でどうやって自分と自分の部下を守るのか。それは要するに勝敗論です。買ったけど死んじゃうとか、敗者になって生き残るんじゃなくて、自分の信念を貫いてなおかつ生き残らないとなんの意味もない。

 

中間管理職を経験したものが誰しも遭遇する、上司からの理不尽な命令、非協力的な同僚、露骨にサボる部下、自分たちの権利ばかり主張するパート。自己実現と言っても仕事は一人ではできない。このような状況でいかに自己実現を貫徹するかの機知に富んでいる。例えば、上司からの理不尽な命令に対抗するには、6つ目に紹介される映画「プライベート・ライアン」にヒントがある。

本当は命令した側もその命令の完遂を必ずしも期待していません。重要なのは、そういう命令を出しましたという事実です。これは日本人には一番わかりやすい結論だと思います。たぶんアメリカでも同じでしょうが、特に日本では有効な手段だと思います。この方法が思いつけるようでないと、きっと組織の中で使い潰されるでしょう。自分の部下も守れないし、定年まで勤め上げることもできない。その解決方法とは「ノルマンディーから最前線に行くまでの間、途中で寝っ転がる」です。サボタージュで時間を稼いで、「努力したけどダメでした」ということにしてしまえばいい。

 

僕自身も経験したことがある。人員が足りない、納期が間に合わない、それなのに誰も手伝わないどころか邪魔してくる始末。この時は一人で残業して、休日出勤して、「努力したら出来ちゃった」だったんだけど。勝敗論で考えたら完全に僕の負け。だって会社だけが得をして、僕にはなんの得もなかった。幾ばくかの手当で身体的、精神的に消耗しただけ。はたから見たら完全にバカだと思う。
この本を読んでいたら「努力したけどダメでした」で軽く流せていただろうか。なかなか難しいと思う。

9つ目に紹介される映画「ロンゲスト・ヤード」では刑務所の所長を殴って、その報復で30年以上刑務所暮らしをしているじいさんがでてきます。主人公が聞きます。

「アンタ一生ここから出られなくなって、それでも所長を殴ったことを後悔していないのか?」と。すると、「後悔はしてないよ」とそのじいさんはにこやかに言うんです。その報復でもう30年もここにいるんだけど、その時は勝ったので、全然後悔してないと。

 

押井守の映画はツマランて人でもこの本を面白く読めるんじゃないかな。

 

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